伝え人の物語

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岡林靖之(おかばやし やすゆき)

仏事コーディネーター・取締役社長

工芸名
津市 高田仏壇
地域
中南勢
  • その他
  • 神具・仏具
  • 木製品
  • 漆製品
  • その他

職人さんはどこの産地も減少しています。他県と協力しながら良質で伝統的な仏壇を残したいですね。

Q:高田仏壇の歴史と岡林仏壇店さんの歴史についてお願いします。

A:高田仏壇の歴史、詳しいことは私もそんなに分からないですが、たぶん江戸時代の中期ぐらいから、一部の裕福な家で、実際に一般的には明治になってからですよね。 私どもも、明治4年の1月に仏壇店として商売を始めたと、それ以前は、お城の棟銅板の飾り、飾り職人ですね、そこから仏壇作りに入ったというふうに聞いています。 ですから、日本中どこでも金仏壇の産地はそうですけれども、こういう真宗の盛んなところ、プラス城下町といったところが、だいたい元々の産地ですよね。 だんだんと各家庭に仏壇というのが浸透しだして、戦争を経て、昭和30年代中ごろ、伊勢湾台風以降からが、やはり爆発的に仏壇を求められるっていうのが増えてきたみたいです。

Q:戦後平和を求める声や、災害からのがれることを祈る意味でしょうか?

A:ちょうど太平洋戦争で亡くなった方の13回忌とか17回忌の時期になってきたからだろうと思います。

当然、終戦すぐは貧しいですし、家もないような状態ですから、ちょっと落ち着いてきた時期です、それから、伊勢湾台風でもかなり被害が出てと、その復興と共に、日本の高度成長と合わして、だんだんと仏壇っていうのが盛んになってきたみたいですね。

Q:高田仏壇というのは、他の宗派の仏壇との技術的な違いはありますか?

A:特徴的な違いはあります。

この正面を見ていただくと分かります。真ん中にご本尊という阿弥陀如来が入るのですが、そこの前にこのようなお扉、唐戸扉っていうのが付きます。そして屋根の柱ですが、この屋根の柱に綸子の模様が彫刻してあります。これは、ほかの宗派ではないです。

だから、これら両方してあるのが本当の高田の仏壇です。両方してないとダメですね。

この唐戸と柱に彫刻がしてあるっていうのが基本です。屋根は藁葺き一重屋根に、綸子模様の彫刻があることが基本です。

Q:宗派によって、形は全部違うのですか?

A:瓦葺きであったり、二重屋根だったり、柱は黒塗りだったりとか、宗派によって違います。 それと、もうひとつ特徴的なのが、両側に上りと下りの龍の彫り物を付けて、お仏壇を装飾するのも典型的な特徴です。 みなさんこれをよく知ってみえて、これが付いているか、いないかで判断されるのですが、 実際は唐戸と綸子柱が、高田仏壇の約束事です。

Q:当初は全て津市内で製造がされていたそうでが、今はどうなのでしょう?

A:残念ながら、もう出来ない仕事がありますね。高齢、あるいは後継者がいないことで、実際出来るのは、漆塗りの工程、金箔押しの工程、蒔絵といったことですね。最近まで、この屋根木地とか、津で作られておったのですが、この職人も引退してしまいました。

今の時代、これはもう他の産地でも同じような問題はあるわけなんですよね。ですから、そういう他の産地の職人の協力を得て、製造するようになってきています。

 

Q:岡林社長は家業を継いでこられて、何か思うところございますか?

A:なかなか難しいですね。生まれた時は、店と仕事場と住まいは一緒、職人も住み込みての同居という環境にて育っていますから、自然とそういう流れで後を継ぐ事になりました。ただ、当時は需要もすごく多い時代ですし、逆に品物が足らない、製造が間に合わないような状況の時代でしたから良かったです。今は、なかなかね、そうじゃないですよね。

核家族になり、仏壇を祀る風習もなくなってきており、また家も洋風化してきて

高齢化とともに、田舎の親は都会の子供のところに引き取られるけれど、田舎の大きな仏壇を持っていくことは出来ない、といった問題も起こってきています。

洋風の家が結構あると思いますけども、私共は昔のお家に合わした作りの仏壇が主になっていますから、今の人に対してのミスマッチっていうことも出てきています、これはやっぱし業界あげてなかなか難しい問題だと思っていますね。

Q:雑誌などで洋風な仏壇や、斬新な仏壇もみかけますが、高田仏壇ではいかがですか?

A:たしかに、おっしゃる洋風の仏壇、店の2階に置いてありますけども、そういう仏壇はまだ東京とか大都会と違い、どんな物かなと思って見に来られる方は勿論あります。いろんな情報網がありますから。

だけど、いざ見に来られてこれを購入しようとされる方は、まだ少ないのですよ。幸いにして。

洋風の仏壇というのは、やはりご親戚とのお付き合いなどあったりとかして、自分たちの思いだけでは、なかなか洋風にいきにくい。あるいは写真で見てイメージしていた物と実際の物とは、ちょっと感じが違うといったことがございますので、それらは購入まで行くことが少ないです。

それと、やっぱし出来れば、伝統的な物の方にこだわりたい。それで、引き継いできておるところですから、もう伝統的な物やめて、洋風に走ってしまうというところは、あまりしたくないですよね。

だから、広い情報をお与えして見ていただいて、金仏壇はお客様のご宗派にとってどういう意味であるかご説明して、その上でお客様の判断ですよね。どうしたいかっていうのはね。ある程度約束事がいろいろ決まっているので、洋風に主軸をもっていくというのは、少し難しい部分があります。逆に中途半端な方向になってしまうところが出てきます。

Q:高田仏壇の需要は海外にもありますか?

A:ほとんど、三重県だけですよね。

Q:三重県出身の方で、他県や都心に行かれる方などは如何でしょう?

A:北海道はね、ありますよ。北海道開拓で、三重県から出ていってみえますから。

だから、帯広だとか札幌だとかあの辺仏壇送ったりとか、買いに来られたりとか、いう方はありますよね。

あとは、もう関東と。関東に少しと、愛知県や福井県ですね。西日本にはないですよ。非常に高田という面だけで捉えるというならば、非常にマーケットが小っちゃい宗派ですよね。

Q:仏壇業界全般的には、海外に向けての動きとかありますか?

A:かつて大手の小売店の方がブラジルやハワイに店舗を出してみえたことはありますよね。

それは海外に移住された方、現地でお寺なども建てられるところがありますから、そこの仕事を受けたという話でしたけれども、その程度で今はすでに無いですよね。そういうタイプのもね。

Q:仏壇の技術を活かし、何か別の展開などは考えられることありますか?

A:この前もね、県の方伝統工芸セクションの方が来られて、そのようなお話もしたのですけど、すでにもう遅いですよ、遅いっていうのは、もう高齢化しすぎて。

若い方でも60才半ばでしょ。ほとんど70、80才の方ですから。今更新しいことせんでも、もう私の代だけでいいんだという。その方たちの子供さん、継いでないですからね。残念ながらそれまでの上の世代は世襲できていますけども、そこから下は継いでないですよね。

Q:仏壇の掃除で失敗したことがあります。掃除のコツはありますか?

A:金箔が剥げますからねよくありますね。本金は柔らかいですからね。拭いて剥げないような金は本金ではないです。

金は拭かないで、軽くふわぁと埃を掃くだけです。縦面はそんなに金は汚れないですよ。

一生懸命拝まれて、線香や蝋燭焚かれたら、その油煙で埃が付いたりすることはありますけど、それはもう開き直って、一生懸命拝んでいるしるしと、汚れたら金箔をやり替えればよいですから。

Q:仏壇のお洗濯と言われていることですね。

A:田舎の大きい仏壇でしたら、張り替るだけじゃなく、部品を分解して全部木地に戻すんですよ。その上で、もういっぺん金箔を貼ります。

新品を作るのと同じ工程で、下地、塗、金箔をしてというような事をやっていきます。年数が経つと、本金を貼り直しても、一部分の修正では絶対揃わない、継ぎあてたみたいな形になってしまいますから。

 

Q:なるほど。全部分解できるようになっているのですか?

A:なってます。だから、釘を使っているのは、サイドから5か所くらいづつで、動かないように固定しているだけで、それさえ外したら、簡単にバラバラっと分解が出来ますよね。

Q:直して長く愛用できる作りになっているのですね。素晴らしいです。ありがとうございました。

伝統工芸品

仏壇 040うねり40高田2唐戸
高田仏壇
店名
株式会社 岡林
事業内容
仏壇仏具製造販売
代表者
岡林靖之
所在地
三重県津市東丸の内25-15
電話
059-225-3150
アクセス
津新町駅出口から徒歩約18分
津なぎさまち港から徒歩約19分
阿漕駅出口から徒歩約23分