
起 正明(おこし まさあき)
伊勢型紙メーカー
- 工芸名
- 鈴鹿市 伊勢型紙
- 地域
- 北勢
- インテリア雑貨
- 文具
- その他
- 和紙製品
「私達が大切にしていることは、伊勢型紙の「デザイン」なんです」
Q:オコシ型紙商店の歴史について
A:伊勢型紙の歴史は諸説があり、1000年の歴史とも言われています。私が信憑性ありと考えているのは、五百数十年前の室町時代(1467年)応仁の乱によって、経済の中心であった京都が焼け野原になり、着物にまつわる産業が発達していた京都の素晴らしい才能の持ち主であった様々な職人が、命を守るために京都から近郊に逃れた。そのうちの型紙彫刻職人が伊勢の地に留まり現在まで継承してきたのが始まりではないかと考えています。その後江戸時代には、徳川幕府の特別な恩恵を受け紀州藩の飛び地になり、優秀な産業であった伊勢型紙が後押しされ、商人でありながら武士並みの待遇を与えられたことで、行商がしやすくなり、全国に足を運ぶことが出来た。このことで伊勢型紙産業が大変栄え発展したという歴史があります。
弊社オコシ型紙は大正13年(1924年)創業で、平成26年で90周年の歴史になります。型紙の商家は、中々長続きすることが難しく、弊社が一番長い程度です。現在、型紙資料館になっている寺尾家は江戸時代に隆盛を極めた商家であったが、何故か今は途絶えてしまいました。彫り職人についても4代、5代続いているところは無いのが現状です。伊勢型紙業界は昭和58年を頂点として、その後は着物離れが進み、残念ながら右肩下がりの一途をたどっています。

Q:オコシ型紙商店での仕事と技術についておきかせください
A:伊勢型紙の産業では、現在3つの分業に別れています。
渋紙を作る地紙業者、型紙を彫る彫刻士、デザインを絵師に頼んで制作・アレンジしたものと渋紙を彫刻士に持っていき型を制作してもらい、販売もする商家(問屋・メーカー)。
弊社は、この商家に当たります。
商家である弊社の特徴としましては、大半の商家が染元からのオーダーに対して型を製造して販売している「注文型屋」であるのに対して、弊社では自社でデザインしたものから染元に好きなだけ自由に選んでもらう「仕入れ型屋」の形式をとっている事です。オーダーメイドで型を仕上げる課程では、素案やイラストで仕上がりを想像して決定していきますが、型に仕上がったものから選べるということは、仕上がりとのズレが無くなるわけです。さらに、オーダーですと、一彫り単位で、数枚重ねて彫った型をすべて買い取りしなくてはいけませんが、弊社の場合気に入ったものを1枚だけでも購入して頂けるので、染元にとっては無駄がなく経費も安く済みます。もちろんフルオーダーの注文も賜りますが、「仕入れ型屋」の形式を中心にすることで、弊社は他社との差別化をしてきました。新しいデザインを産み出し続けた結果今では1万点の柄を所有しています。

Q伝統を引き継ぐ事についてどうお考えですか?
A: 伝統って一体どういうことか?と考えたときに「面々と受け継がれるもの」ということですよね。切ったら終わりですよね。今から作られるものとは違うわけですから、何かの要素・要因を利用させていただきたいとは考えています。
伝統の証でもある、五百数十年以上の歴史ある技術だということに誇りを感じますし、紙を彫刻することでしか表現できないデザインもあるわけで、それらの部分を十分に尊んだ上で、伝統があるからこそ他のものと差別化させた語りが出来るところなので、伝統は大切にしていきたいですね。

Q:今後のとりくみについてお聞かせください
A:納品場所は、京都の染元への納品が中心となり、一部を江戸小紋で知られる東京におさめています。伝統工芸としての伊勢型紙は、産業その物が認められているわけですが、その一部である型紙の彫刻の部分が一番スポットライトを浴びているのが現状です。
伊勢型紙において、彫刻する技術は熟練の職人が長い年月を掛けて培って来た大変大切で、私もその技術や長い歴史にももちろん強く敬意を評しているところではあるのですが、「ちょっと待って下さい、もっと凄いところを見落としていませんか!」という思いがあります。それは、メーカーである私達が大切にしている伊勢型紙の「デザイン」、「意匠性」なんです。シルエットの変わらない着物において、色や柄を時代に合わせて変えてきたからこそ今まで伝統が守れたのだと考えています。産業として成り立ってきた根幹には、多様なデザインを職人さん(彫刻師)に提供できたからこそ、というのが大きいからではないですかと僕は思っています。
ですから、デザインの意匠性に着目した継承の仕方を工夫して、これからも様々な現代の商品に転化させていき、デザインの素晴らしさを提案してゆきたいと思います。

伝統工芸品
- 店名
- 株式会社 オコシ型紙商店
- 事業内容
- 伊勢型紙の製造・販売 伊勢型紙の関連商品の製造・販売 染色型紙製造・販売 シルクスクリーン型の製造・販売
- 代表者
- 起 稔
- 所在地
- 〒510-0234 三重県鈴鹿市江島本町 27-25
- 電話
- 059-386-0229
- FAX
- 059-386-0677
- 営業時間
- 9:00~18:00
- 定休日
- 土日・祝日
- アクセス
- 近鉄白子駅より 徒歩5分